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バンザイクリフ
私の父が定年を迎え早10年。それまでは仕事柄、長期休暇が取れず旅行好きの母は、夫婦旅行をいつも国内で我慢?していました。父の定年後、健康を維持しながら海外旅行を楽しむようになりました。昨年母が「サイパンに行きたい」「父(私の祖父)の慰霊をしたい」と言いました。聞くと祖父はサイパンの海から観えるフィリピンへ第二次世界大戦中ドイツ語の通訳として行き、病気にかかり亡くなったそうです。それまで祖父のことについては触れたがらなかった母の気持ちが少し理解できました。父はもちろん、私も見たことの無い祖父の慰霊がしたく、3人でサイパンへ行くことに。サイパンの「バンザイクリフ」にはサイパンで戦死した方達の慰霊燈があります。その方達の慰霊も出来ることで「バンザイクリフ」へ向かいました。辿り着くと、母が「バンザイクリフ」からフィリピン島に向かい手を合わせます。私も父もそれに続きました。手を合わせ終えた母は「お線香、持ってこれば良かった。私って馬鹿だわ…」と悲しそうに呟きました。すると父が「コイン、コインを海に投げよう、良く解らないけど外国人してるだろ?」・・・父は亭主関白そのものの人で、仲は悪くないのですが、母に対し優しい言葉や気使いなどはそれまで見せたことが無い人でした。そんな父が母の悲しそうな顔を見るや、お線香に代わるものを探し、母の涙を拭ってくれたのです。私は普段なにも言わないけれど、父が母を思いやる気持ちを知りジーンと心が温まりました。きっと母の心はそれ以上に温まったに違いありません…。